箍(たが)は、桶(おけ)や樽(たる)の外側にはめて、周囲を締めて固定する輪っか。
金属製のもの、竹製のものなどがあります。

「タガが外れる=束縛がとれ、しまりのない状態になる」
とか、
「タガが緩む=緊張がゆるむ。年をとって鈍くなる」
あるいは、
「タガを締める=たるんだ気持ちを引き締める」
等の慣用句に使用されているのは、ご存知の通りです。

桶や樽の姿を思い浮かべていただくと、上記の語義に依るまでもなく、箍(たが)がキチンと締まっていれば、桶や樽は、形をとどめ、役に立ちますが、タガが緩み、タガが外れてしまったなら、桶や樽は、水漏れを起こしたり、バラバラになったりして、用を成さなくなります。

少し前に、自宅おフロの「手桶・湯桶・浴イス」を、ヒノキ製に変えたことをお伝えしました。
現在も使用継続しているのですが、その生活の中で、
(あぁ、こうすると、タガは外れてしまうのか…)
ということを学びましたので、そのことを書きます。

ヒノキ材に限らず、木製の湯桶類は、使用の後(のち)、必ず乾かさなければなりません。
なぜならば、湿ったままにしておくと、すぐにカビが生えるから。

でも難しいもので、ただ闇雲(やみくも)に乾かせばいい、というものではないのです。
桶の説明書には、
「直射日光を避け、風通しの良い場所で、陰干しをしてください」
と記されていました。

されど、であります。
カンカン照りの、快晴の日。
陽光燦燦(さんさん)と降り注ぐ中に置いてやれば、カラリと素早く乾いて、手桶も湯桶も気持ちがよかろう…と、洗濯物やフトンと同様に、つい天日(てんぴ)の下で干してみたくなるものなのですよ。

で、干しました。
明るい日差しの下に置き、お昼をまたいで6~7時間。
(もうすっかり乾いたろう…)
そろそろ三時になろうかという時刻、桶たちをおフロに戻そうと手に取ったところ、ポロリと、箍(たが)が外れたのです。

(あ!…やっぱり直射日光ダメだったんだ。箍ってホントに外れちゃうんだ!)
ポロリと落ちたタガを慌てて拾い、慎重に桶に再装着。何とか元に戻り、使用可能に復しました。

そして気づいたこと…。
「タガが緩む」「タガが外れる」と言いますが、それはタガが主因ではないのですね。
その内側にある〈木組み〉が、乾燥し過ぎて縮(ちぢ)んだ結果、タガとの間に隙間が生じ(=タガが緩む)、その状態が更に進むと、タガが外れてしまうのでした。

さて、冒頭ご紹介した慣用句はいずれも、「タガ」を、「人の心」や、「生きる姿」に、当てはめておりました。
言い得て妙、と思います。
慣用句語義のままではありませんが、
「人の心」も、乾き過ぎてしまうとタガがゆるみ、生じた心の隙間から、〈やる気・勇気・覇気・根気〉等の、気力が漏れ落ちます。
「人のいのち」は、萎縮し過ぎてしまうとタガが外れ、生命体として、バラバラになってしまう気がいたします。

お互いに振り返りましょう。
(自分の心は今、乾き過ぎてはいないだろうか?)と…。
そして、
(私は今、誰かのいのちを萎縮させてはいないだろうか?)と…。

箍(たが)を嵌(は)め直した我が湯桶たち、それからどうしたか、をお伝えします。
私は桶たちを、そぉっと浴室に持ち帰り、「温湯(おんとう)」に浸しました。
木肌は潤い、水分を吸って微妙に膨らんだヒノキは、タガとの密着の度合いを深め、桶たちは活性化いたしました。

タガを引き締め、乾きすぎた桶を復活させるために、必要なものは「潤い」で、そこに「温かさ」が加わると、より効果的なのでした。

それなので付言させていただきます。

〔付言の1〕
己の心の乾燥度合いを認知するだけではなく、自分の心を「潤す」ためのメニューを、いくつか確保いたしましょう。
本を読む、音楽を聴く、映画を見る、友と語らう、自然に触れる、温泉に浸かる、美酒をいただく、そして、仏さまに会いに行く…等々。
心が乾燥した時にする、それらの行いは、乾いている時だからこそ、心中深くにまで沁みとおる潤いを、きっと与えてくれることです。

〔付言の2〕
誰かを萎縮させていないか反省するだけではなく、周囲に進んで「温もり」を贈り、接する人が伸び伸びと力を発揮できる、雰囲気を持った人物になりましょう。
本当に力のある仏さま・神さま方は、私たちを畏怖させることはあっても、けっして畏縮させることはありません。
子ども、部下、後輩、伴侶などが、あなたの温もりの中で、伸び伸び活躍する姿を見ることは、ご自身の活力源となるはずです。

おしまいに…。
桶たちが潤い、最も活性化している状態とは、お湯を汲んだり、お湯を溜めたり、という、「湯桶本来の誕生意義・存在意義」に沿って働き、役に立っている時。
その時に桶は、他のために働きながら、自らも潤うのです。

人もまた、「自らの誕生意義・存在意義」に沿って働いて、誰かの役に立てた時に、心は潤い、命は活性化とするのだと考えます。
自分が「何をするために生まれてきたのか」を知り、それに沿って、伸び伸びと働ける日々を、最上の幸福と定義したいと思います。
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